後に、青蛙をしてカオナシ以来のカタストロフと呼ばれたその一件は、不幸にも湯婆々の留守中に起こった。暴れているのは湯屋のナンバー2、誰が止められるだろうか、と誰もが思った。
崩れた梁、天井、立ち煙る中、それでも、衝撃から千里を守った若がハクに向き直る。
「ハクっ!!…っ」
完全に目は覚めているようだ。その瞳に宿るのは怒り。
「ち、…千里!?」
不本意にも、怒りにまかせ、娘に衝撃波を与えるところだった事実にハクが驚愕した。若がかばわなければ、千里は傷ついていたかもしれない。
「ハクといえど、許さないゾっ!」
キッ!とハクを睨みつける。
「ち、違う…!」
先ほどの怒りもそこそこ、さしものハクもうろたえる。
すわ、撃ち合いか!?の刹那、
「やめなさああああああいいいっっ!!」
二人の間に割って入ったのは千尋だった。
「何をやっているの!?二人ともっ!!」
交互にハク、若を見やる。
「ハクっ!」
「ち、千尋!?」
「坊ッ!!」
「坊じゃないゾ!」
若だぞ…と言おうとする坊を遮って千尋が叫ぶ。
「問答無用!早く持ち場に戻りなさああああいッ!!」
「「はあああぃッ!!」」
同時に返答し、坊にいたっては仕度もそこそこに、二人揃って出て行った。
壁紙提供:dpi Web Graphix様