お父さん竜は心配性!?(2)

 後に、青蛙をしてカオナシ以来のカタストロフと呼ばれたその一件は、不幸にも湯婆々の留守中に起こった。暴れているのは湯屋のナンバー2、誰が止められるだろうか、と誰もが思った。

 崩れた梁、天井、立ち煙る中、それでも、衝撃から千里を守った若がハクに向き直る。
「ハクっ!!…っ」

 完全に目は覚めているようだ。その瞳に宿るのは怒り。

「ち、…千里!?」

 不本意にも、怒りにまかせ、娘に衝撃波を与えるところだった事実にハクが驚愕した。若がかばわなければ、千里は傷ついていたかもしれない。

「ハクといえど、許さないゾっ!」

 キッ!とハクを睨みつける。

「ち、違う…!」

 先ほどの怒りもそこそこ、さしものハクもうろたえる。

 すわ、撃ち合いか!?の刹那、

「やめなさああああああいいいっっ!!」

 二人の間に割って入ったのは千尋だった。

「何をやっているの!?二人ともっ!!」

 交互にハク、若を見やる。

「ハクっ!」

「ち、千尋!?」

「坊ッ!!」

「坊じゃないゾ!」

 若だぞ…と言おうとする坊を遮って千尋が叫ぶ。

「問答無用!早く持ち場に戻りなさああああいッ!!」

「「はあああぃッ!!」」

 同時に返答し、坊にいたっては仕度もそこそこに、二人揃って出て行った。

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